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【STEP400事例】Streamphone -染物ノ川- / invisi dir

IDÉE TOKYOおよび無印良品 銀座を中心に開催された企画展「Life in Art Exhibition」で展示されたinvisi dirのサウンドインスタレーション作品「Streamphone -染物ノ川-」。友禅流しの優美さから発想を得たというこの作品は、役目を終えた素材を再利用する事で再度命を吹き込んだ、心地良い音を奏でるサウンドインスタレーション・立体作品です。STEP400を使った作品の制作過程について、invisi dirの高花謙一さんにお話を伺いました。

作品について

— まずどのような展示なのかについて教えてください。この動いているのは布ですか?
これは展示場所の無印良品でもともと使われていたターポリンの垂れ幕で、それを染め直して穴あけなどの加工をし再利用しています。ターポリンが移動していって、オルゴールのように穴が開いている部分で音が鳴るようになっています。これが全部で7台、吹き抜けの天井から吊られています。それぞれのターポリンが正回転、逆回転どちらに動いても、またどの組み合わせで鳴っても成立するように作曲していて、曲としては幕の動きや空間的な配置をもとに構成しています。

— 穴はセンサで検出しているんですか?
いえ、筐体の裏側に鉄琴が設置されていて、布の上を転がる球が穴に落ちることで物理的に鉄琴を叩くようになっているんです。

— あ、物理的に鉄琴が鳴っているんですね!この球の部分はどうなってるんでしょうか。幕と鉄琴の距離はごくわずかしかないですよね。
これは最初に実験をしていた時の記録で、原理的にはこういうふうに穴の位置で球がすこし落ちて鳴るようになっています。落差5mmくらいしかないんですけど、それでも十分鳴ります。ですのでターポリンが移動すると勝手に鳴ってくれる仕組みです。


— なるほどー!このあたりはつい難しく考えてしまいがちですが、シンプルな機構でとてもいいですね

システム

— このターポリン幕の駆動がステッピングモータですね。
駆動部はStrawberry Linuxで入手したモータとミスミのローラーの組み合わせでできていて、天井のバトンに2枚のSTEP400が吊ってあって、そこまで原点とリミットセンサの線とモータの線が延びています。

PCで動いているCycling'74 Maxがシーケンスのマスターになっていて、OSCをSTEP400に送っています。Maxでやっている処理自体は非常にシンプルで、シーケンスに合わせてモータをトリガして、幕の各終端でセンサが反応したら止めて、次回動く時には逆回転にする、というものです。

Max制御画面


— STEP400を使う上で難しかった点などはありましたか?
最初KVALをうまく設定しないと回りださないので、そこにすこしはまりましたね。でも動き出してしまえば全然問題なかったです。展示ではバトン上に基板があるので簡単には触れないところにあるのですが、不具合で降ろさないといけないというようなこともありませんでした。


— 確かにKVALはモータとか電源電圧によって設定値が違うので、多少トライ&エラーが必要な部分ですね。幕の両端はどうやって検出しているんでしょうか。
ターポリンの終わりの部分に四角い穴をあけていて、そこに光電センサが反応するようになっています。ターポリンの右端と左端それぞれに穴と専用のセンサがあって、STEP400のHOMEとLIMIT端子につながっています。

メカの設計

— どのように機構設計したかを伺いたいのですが、まずこの側面の白い部分は樹脂ですか?
ここは板金で、試作の結果をもとに図面を引いて山本製作所で作ってもらいました。機構部品はほとんどミスミで調達したもので、シャフトもミスミで長さを指定して切ってもらっています。


ミスミは棒でもチャンネルでも切ってくれるのがいいですよね。あと最近同じくミスミの板金や切削部品を作ってくれるMeviyというサービスを試したのですが、思っていたよりリーズナブルでかなり使えるなと思いました。
今回の作品もローラー部分はローラー屋さんに作ってもらおうと思ったのですが、重量や価格の問題で結局ミスミに落ち着きました。制作期間的にミスミがなかったら出来なかったかもしれません(笑)。

今後の可能性

— 最後に今後の展開などがありましたら教えてください。
この構造は汎用的に使えると思っていて、例えば長い幕の2か所に鉄琴を取り付けて2か所で再生してもいいし、球を押さえる部分を工夫すれば縦位置に設置することもできそうですし、いろんな可能性が考えられるなと思っています。

聞き手:堀尾寛太

Credits

「Streamphone -染物ノ川-」
松尾 謙二郎
高花 謙一
林 凱葶
中村 優一
小田部 剛
鹿又 亘平
宮下 恵太

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