STEP400: Weekly Update #04 産業ドライバ vs STEP400

この記事はこちらのお知らせを翻訳したものです。
https://www.crowdsupply.com/ponoor-experiments/step400/updates/ask-me-anything-wednesday-october-14th-and-industrial-stepper-drivers-vs-step400

ステッピングモータメーカの中の人との会話

全く予想外のつながりから、産業用のステッピングモータメーカの中の人と話す機会がありました。このポストは我々の雑談をまとめたものですが、STEP400が何のためのものであって何のためのものでないか、を理解するのにとても役立つと思います。

東京アンダーグラウンド電子シーンの人として

2005年、私はdorkbot tokyoというイベントの企画者の一員でした。電気で変なことをしている人たちにジャンルを問わず声をかけ、プレゼンテーションやライブをしてもらいました。その第1回に登場していただいたプレゼンターの一人が盗聴電機大学さんです。彼は「ラジオライフ」というハッキングというかほぼクラッキングのような情報ばかりの雑誌のライターさんで、そこでおもしろ電子工作実験の連載をされていたのです。
そして15年後、モータメーカの増田さん、としてメールで連絡をいただいたのでした。


Kanta (K): お久しぶりです!
Masuda (M): 本当にお久しぶりです、2005年以来ですよね。
K: そうですね、dorkbot tokyoの第1回に出てもらって以来ですね。

ラジオライフ誌でのdorkbot tokyo第1回のレポート。
ラジオライフ誌でのdorkbot tokyo第1回のレポート。

K: 確か富士山から発電しながら自転車で下る実験を紹介してもらいましたよね。

M: そうそう、ママチャリに車の発電機をつけて、100Vに昇圧するインバータと炊飯器の小さいやつを荷台に積んで、富士山の五合目から降ってその力でご飯を炊くっていうことをやりました。結果は疲れるだけだったんですけど 笑。
K: あと確か信じられないくらいの数の単1電池で何かを動かしていたような、、
M: 単一電池を200個くらい並べて、デスクトップパソコンを起動させたりしてました。ヨドバシカメラの在庫を全部買い占めて。

K: 当時はSNS時代の直前で、各シーンが今より分かれていた感じがありましたね。メイカーカルチャー的なものと電気街カルチャーは割とはっきり分かれてましたし。
M: そうですね。電子工作シーンではPICやH8がメインでした。
K: 電気街でArduinoが売られるようになるとは想像できませんでしたよね。2010年くらいに潮目が変わったように感じます。メイカームーブメントが成し遂げたことは大きいけど、その陰で消えつつある昔ながらのラジオ、アマチュア無線、オーディオの文化にも着目したいですね。

産業用モータメーカの人として

K: そして今はモータメーカで働いていらっしゃるんですね。突然ビジネスライクなメールがきてびっくりしました 笑
M: そうです、今も会社で変なことをやっているのは変わらないんですけど。うちは生産ラインで使ってもらうような産業用のモータやドライバを主に作っていて、ただこれからは一般向けもやりたいと思っていて、電子工作の分野とか教育分野に向けて販売できないか検討しているんです。そしたら考えていたものとかなり近いものを見つけて、あ、作っているのは堀尾さんだってことになってお声がけしました。
K: そうだったんですね!でも本物のメーカがこういう基板を作られたら、我々なんか一瞬で吹き飛ぶ規模です。社内には製造のプロもいっぱいいらっしゃるわけじゃないですか。うらやましいです!
M: いやーそれが、いるはいるんですけど、そこを通すとすごく高くて高性能なものになってしまうんですよ。
K: なるほど、必要以上にちゃんとしすぎてしまうというようなことですか。
M: クレーム時の不具合調査どうすんだ、みたいな話も出てきて。そんなんBtoCじゃやってらんないじゃないですか。
K: すみません、どういう意味ですか?
M: 産業向けだと、客先でチップが燃えた、となると、チップを半導体メーカに調査を出すんですよ。で、パッケージを削ってダイを露出させて、原因を特定して、報告書をもらって、責任範囲を議論する、というのを何か月もかけてやるわけです。
K: うわーすごい、、「危ないことには使わないでね」という風にできればいいんですけどね。
M: それは会社としてはできないんですよ。
K: 産業用製品が高いのもわかる気がします、、、一方で3DプリンタのドライバとかはAmazonで信じられないような安値で売ってますよね。
M: そこで使われているようなArduinoベースで安いチップを使った構成なんかは、社内で評価してみると、精度としてはまったくダメなんですよ。速度の変動もあるし。でもその精度で困ったという話もないんですね。
K: 僕は展示物の制御をすることが多いのですが、そういう分野だと信頼性にコストをかけずに、予算内でとにかくたくさんの物を動かしたい、というようなことが重要になったりするので、性能と価格のバランスはいろいろあり得そうですよね。

駆動方式

K: 産業用のドライバはほぼ定電流制御みたいですね。我々は演出用途に使うことが多いので、静かに回すためにいつも電圧制御でした。
M: 電圧制御で静かに回すという使い方はまったく考えたことがありませんでした。
K: そうなんですね!僕はむしろ静かなのがステッピングモータの特徴だと思っていました。
M: 基本は工場で使う想定なので、騒音の問題はあまり関係ないんですよ。我々の認識だと、そもそもステッピングモータはうるさいもの、ですね。PM型は電流が小さいので、結果的に定電流制御しきれずに実質的には電圧制御みたいになっていることはあります。HB型を電圧制御することは普通はないですね。高速域までトルクがでる電流制御です。
K: PM型とHB型というのはどういう違いなんでしょうか?

左:PM型、右:HB型

M: PMは (Permanent magnet 永久磁石) のことで、こちらの丸いほうです。焼結の滑り軸受になっていてローコストです。四角いのがHB (Hybrid ハイブリッド) 型で、ステップが細かい、軸受けがボールベアリング、という違いがあります。ただハイブリッド型がいろんなところでスタンダードになってきて、かつてのような高級なモータというイメージはなくなりつつあります。
K: へ~、、全く知りませんでした、、

通信について

K: 産業用のモータドライバは上位の制御装置に何を想定しているんでしょうか。
M: うちのお客様はだいたい産業用のPLCですね。そもそもが工場で決まった動作を呼び出して使うことが多いので。
K: 演出用途はインタラクティブ性があったりしてリアルタイムに制御することが多いので、その点は設計思想が大きく違ってきそうですね。御社のドライバには通信ができるものもありますが、これらはPCをマスターにできるんですか?
M: そうです、PCIバスを使って4軸分のパルスを出す拡張ボードとか、もっと大量の軸を制御できるネットワーク規格があったり、EtherCATとかの産業用イーサネットもあったりします。
K: なるほど、STEP400は普通のEthernetのUDPなので、産業用プロトコルの確実性はありませんが、その分使いやすさをとっています。実際には閉じられた有線ネットワークで届かないということはほとんどないですけど、可能性としてはあります。損害がでたり怪我したりするわけではなく、ただちょっと見た目に変だったな、という程度の内容だったらその信頼性で十分のことはありますね。もちろんクリティカルな部分では産業用製品を使っていますが。

産業用ドライバ vs STEP400

我々のオタク話はこのあと2時間続きましたが割愛しまして、今回伺った話をもとに、違いをまとめておきたいと思います。

産業用ドライバSTEP400
信頼性万全普通
保障万全できるだけサポートします
通信の方式複雑だがエラーを確実にとらえるシンプルだがエラーの可能性を許容している
通信のリアルタイム性極めて高い普通
価格高価安価
向いている使用方法問題が危険や金銭的損害に直結するもの。問題が起きても危険がないもの、損害に直結しないもの。

dorkbot は「電気で変なことをする人たち」というテーマでプレゼンテーションをする会で、ニューヨークから始まりました。dorkbot tokyo は城一裕/exonemo/堀尾寛太を企画者として、2005年から2009年ころまで開催されていました。